南海トラフ臨時情報への防災対応、政府がガイドライン
政府は29日、南海トラフ地震が起きる可能性が高まったとして「臨時情報」が出された際の防災対応について、自治体や企業が事前に計画を作るためのガイドラインを公表した。リスクが高い地域は臨時情報発表で1週間程度の事前避難が必要になるが、具体的な地域名や避難先などを2019年度末までに地域防災計画に定めるよう市町村に求めている。
事前避難が必要なケースは、想定震源域でマグニチュード(M)8級の地震が起き、さらに震源域内の別の地域でも巨大地震が起きる可能性が高まったとして気象庁が臨時情報を発表した場合。後発地震による津波の到達までに、避難が間に合わない地域が対象だ。
対象地域は「丁目」「町」や学区ごとなどで、住民全員が対象か高齢者らのみが対象か、市町村が定める。避難先は親族や知人宅を基本としたが、確保できない住民向けの避難先も事前に決めるとしている。防災計画作りの対象になるのは最大で震度6弱以上が想定される29都府県の707市町村と域内の企業や学校など。事前避難対象地域の教育施設には臨時休校などの対応を促した。
南海トラフ臨時情報 “津波最速の町”は
甚大な被害が想定される「南海トラフ巨大地震」が起きる可能性が高まった場合にどのような防災対応を取るべきか、国が自治体などに向けたガイドラインをまとめた。南海トラフの震源域でマグニチュード8以上の大きな地震が起き、気象庁がほかの地域にも連動する可能性があると発表した場合に、地震が起きてからでは津波からの避難が間に合わない地域の住民や避難に時間がかかる高齢者などは念のため1週間程度、避難する必要があるという方針が示されている。
本州最南端の和歌山県串本町。南海トラフ巨大地震の津波が最短2分で到達するとされる“津波最速の町”だ。串本町では津波避難ビルの指定を進めているが、最悪の場合、周辺の住民でさえ避難が間に合わず、津波に飲み込まれてしまうと想定される。地図上の赤い地域は、津波から逃げることが難しい津波避難困難地域。串本町では約6000人がこうした地域に暮らしていて、臨時情報による事前避難の対象となる。
1週間の事前避難では、まず避難所の確保が課題だ。串本町総務課の枠谷徳彦副課長「テント用地になっていまして、テントを張って生活して頂くスペースになります。串本町全体で浸水域が多いものですから、集会所や会館が浸水域にある地区においては、高台の用地を確保するようにしています」。串本町で野外生活をする人は、最大約700人。
さらに、県や町が防災倉庫に備蓄する数日分の食料は、事前避難では原則、使用できない。枠谷副課長「こちらはあくまでも災害が発生した時用です。例えば、こちらを自主避難の時に使用して、その直後、実際に大きな災害が起こった場合に、その時の非常用の食料が無くなってしまうことも考えられますので、できれば事前避難についてはご自分で用意して頂きたい」。
避難する人が、各自で準備しなければならない1週間分の食料。しかし、串本町では大型スーパーが沿岸部に並び、臨時情報が出ている中で営業をできるかはわからない。串本町民「今のところ、とくに買ってはいないです」。「前もって言わないとそんな準備できない。1週間避難してくれ、安全な場所へ。ようわからんわ、その場になってみないと」。
29日に発表されたガイドラインでは津波だけではなく、土砂災害の不安がある住民や耐震基準を満たしていない住宅に住む人も、避難を検討すべきとされた。