市場に高まる為替介入観測 不自然な円相場値下がり
政府・日銀が円の急騰を阻止するため、市場介入に踏み切ったとする観測が国内外の金融市場で急速に広がり始めている。11日の欧米の外国為替市場で円相場の不自然な値下がりが進んだためで、日銀が大量の円を売ってドルを買い、円安に誘導したとする見方が広がった。市場では「政府・日銀がどこまで円高を容認するか」を注視しており、神経質な値動きが続きそうだ。
麻生太郎財務相は12日の閣議後記者会見で、足元の円の急騰について「必要に応じて適切に対応していく」と述べた。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁も同日の衆院財務金融委員会で、物価への影響を注視した上で、必要な対応をとる考えを示し、為替介入の可能性もにおわせた。
既に欧米の外国為替市場では日本政府・日銀が介入に踏み切ったとする見方も浮上。きっかけは11日の欧米市場。円相場が一時1ドル=110円台に急伸した後、一転して2円程度も値を下げたためだ。
介入の有無について、麻生氏と菅義偉官房長官は12日の会見で「コメントは控える」と述べるにとどめ、否定も肯定もしなかった。
日本の介入で直接的に相場を円安ドル高方向に動かしたとなれば、ドル高で企業収益が悪化している米国の心証を害しかねない。日本政府として表だって動きにくい事情を抱えることから、市場では、介入事実を表明しない「覆面介入」もささやかれるなど疑心暗鬼が広がり始めている。
とはいえ、介入を実施したのであれば、もっと円安が進んでもおかしくない状況だっただけに、実施を疑問視する声も根強い。
市場関係者の間では、政府・日銀が今後、大規模な円売り・ドル買い介入に踏み切る水準について「1ドル=110円割れが一つの節目になる」(第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミスト)との見方が広がる。
政府・日銀は、海外市場で円相場が1ドル=75円32銭をつけ、戦後最高値を更新した2011年10月末に、大規模な円売り・ドル買い介入を実施した。その結果、一時3円以上の円安が進むなど瞬間的ながら、介入の効果を生んだ。