MRJ、米国拠点向け名古屋出発 新千歳経由で
三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」の飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)が8月27日午前11時41分すぎ、県営名古屋空港(小牧)から飛行試験の拠点となる米国モーゼスレイクへ向かった。
MRJは午前11時46分に名古屋空港を離陸。フェリーフライト(空輸)のルートは、新千歳空港で給油後、ロシアのカムチャツカ半島、米国のアラスカを経てモーゼスレイクのグラントカウンティ国際空港へ北回りで向かう。到着は現地時間28日夕方(日本時間29日午前)を予定している。
三菱航空機の森本浩通社長は、7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでAviation Wireの取材に対し、「最短距離の北回りを考えている。秋から気象条件が厳しくなる」として、今月内の実施を目指していた。今週に入り、機材点検などで二度の延期を経ての出発となった。
5機の飛行試験機のうち、年内に4機をモーゼスレイクへ持ち込む。赤いラインの飛行試験2号機(JA22MJ)は5月31日に初飛行に成功しており、黒いラインの飛行試験3号機(JA23MJ)と、赤と黒のラインの飛行試験4号機(JA24MJ)は、9月中に初飛行にこぎ着ける見通し。ローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)の塗装を施した5号機は、名古屋空港を中心に、国内で飛行試験を進めていく。
量産については、今秋から最終組立を開始する見込み。量産初号機のANAへの納入時期は、2018年中頃を計画している。
名古屋空港を起点とした飛行試験では、太平洋上など試験空域まで向かわないと試験を始められない。しかし、モーゼスレイクは飛行試験に適した天候であることに加え、離陸後すぐに飛行試験を始められることから、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明を取得するための試験を効率良く実施できる。飛行試験中には不具合が見つかる可能性もあり、現地での改修作業も課題だ。
7月のファンボロー航空ショーでは、スウェーデンのリース会社ロックトンがMRJを最大20機発注する契約締結に向け、三菱航空機と基本合意(LOI)に至った。一方、2月には米国の航空機リース会社エアロリースと最大20機(確定発注10機、オプション10機)の契約に向けてLOIを締結したが、現時点で確定発注に至っていない。
一方、最大のライバルであるリージョナル機大手、ブラジルのエンブラエルが開発した新型機「E190-E2」は、予定を大幅に前倒しし、5月23日に飛行試験初号機(登録番号PR-ZEY)が初飛行に成功した。MRJとほぼ同サイズの機体で同系統のエンジンを採用したE190-E2は、納入時期も同じく2018年を目指している。