2015年度宮崎・都城市がふるさと納税全国1位
個人が応援したい自治体に寄付すると、住民税などが軽減される「ふるさと納税」で2015年度、宮崎県都城市への寄付額が全国1位になった。市に集まった金額は約42億3千万円に上り、前年度から9倍近く増えたという。市は牛と豚、鶏肉の生産が盛んで、人気芋焼酎「黒霧島」の里でもある「肉と焼酎のまち」。個性を生かして肉と焼酎を返礼品にし、ふるさと納税を市のPRに生かす発想が好結果を生んだようだ。
15日午前、ふるさと納税の事務を担う市総合政策課に職員の声が響いた。視線の先には、総務相在任中に制度を考案した菅義偉官房長官。寄付額が日本一になったのを機に訪れ、返礼品を箱詰めする産直販売所などを回った。視察後、菅官房長官は「官民挙げて、ふるさと納税に力を入れている」と評価した。
市がふるさと納税に力を入れ始めたのは14年度から。以前は、アナログな事務手続きを取り、常温で日持ちする地場産品を詰め合わせた返礼品を抽選で当たった寄付者に贈る地味な取り組みだった。毎年の寄付額も、制度が始まった08年度から13年度まで平均500万円ほどで恩恵は薄かった。
そこで、まず返礼品を「従来の幕の内弁当のような形でなく、市を売り込めるインパクト重視へ」(市総合政策課)と舵を切った。都城市は牛と豚、鶏肉の産出額が、農林水産省の市町村別調査で日本一になったことがあるほか、「黒霧島」を生産する霧島酒造が立地するなど焼酎造りも盛んだ。地元業者と契約し、肉と焼酎を中心に50種類以上の返礼品のメニューを作り、寄付者に選んでもらう形にした。
寄付手続きも大胆に簡略化した。まだ普及していなかった、インターネットを使ってクレジットカードで支払えるシステムをいち早く導入。ネットの特設ページには、美しい霜降りの牛肉など鮮やかな写真が並んだ。こうした取り組みを14年10月に始めると、直後から問い合わせが殺到し、14年度の寄付額は約4億9千万円に激増したという。
翌15年度も反響は続き、選べる返礼品の種類を増やしたこともあり、寄付額は伸び続けて「日本一」に。ネット経由での手続きが98~99%を占めた。返礼品の種類は、現在300種類を超えるという。
市の特徴は徹底して地元にこだわる点だ。返礼品は換金性の高い商品券や、市外で生産される電化製品など全国で問題視されているものでなく、肉も焼酎も全て地元から調達する。ふるさと納税の事務を民間委託する自治体がある中、「市外業者に委託するくらいなら」と、市内からパートを雇って市直営で実施する。
市によると、返礼品の調達や発送にかかる経費は寄付額の7割ほどを占めるが、「経費は全て市内に落ちる。公共事業のようなもの」(同課)。集まった寄付金で子育て支援や人口減少対策を拡充できたという。
寄付者が観光に訪れたり、市内の業者が設備を増設したりする効果も生まれた。同課の野見山修一副主幹は「狙いは税収増もだが、むしろ市のPR。寄付する人の9割は市にゆかりのない人で、寄付者が増えればそれだけ市の知名度が上がったことになる。ふるさと納税が市全体の経済の底上げになれば」と話す。