進化続く防犯市場 安心求め研究開発
防犯意識の高まりとともに、企業や大学が、事件や事故の未然防止を目指した研究開発を進めている。認知症患者が行方不明になった際に所在を確認できる靴や近隣で発生した犯罪を知らせるアプリなど分野は多岐にわたる。厳しい安全基準を満たした防犯マンションも盛況だ。防犯の最先端を追った。
「府防犯モデル賃貸マンション」セキュリティーの高い物件が条件、「オートロックに防犯カメラ。管理人も見回りしてくれて安心です」
同マンションは防犯設備の充実した賃貸物件として1月に認定された。ベランダへの侵入防止措置の有無や照明の位置など、NPO法人「府防犯設備士協会」(山科区)が設定する30~40項目の基準をクリアしている。府内の同様の認定物件は賃貸で21件、分譲で137件あるという。
京都府警の統計では、府内の昨年の犯罪認知件数は約2万4千件で、過去10年で半減した。一方、性犯罪の被害は年間約300件で高止まりし、大学生の被害が約2割を占める。2012~14年の府内の強姦(ごうかん)事件の発生場所の割合は、アパートやマンションが約58%と全国平均を約10%上回っている。同協会の友田彰夫副会長(58)は「防犯環境が整った住居に住むことで被害が減るとともに、住人の防犯意識が高まることを願う」と話す。
GPS(衛星利用測位システム)機能を活用した安否の確認グッズなども注目されている。高齢者の入居施設を運営する「ウィッシュヒルズ」(木津川市)は、認知症患者が自身の履物で出かける点に着目し、GPS端末を埋め込んだ靴を商品化した。かかと部分に端末を埋め込み、行方不明になった際、家族や介護職員が専用サイトで位置情報が確認できるという。担当者の佐長誠樹さん(42)は「自由に外出させてもらえない認知症の人もいる。家族と散歩する時間が増えてほしい」と話す。京都コンピュータ学院(京都市南区)の学生たちも府警と共同で、府が発信する防犯メールに記載された事件概要などの文字情報を地図上に示すアプリを開発している。
日本防犯設備協会(東京都)によると、市場規模は過去5年で1兆円から1兆2千億円(14年)に拡大したという。
防犯マンションをはじめ、監視カメラやGPS機能を活用した商品など防犯設備のニーズは多様化している。侵入者を防ぐ赤外線センサーライトや窓に取り付ける振動感知器、盗聴器の発見器なども売れ筋商品に並ぶ。
しかし、防犯グッズは機器の高性能化や小型化も進んでおり、犯罪に悪用される危うさもはらんでいる。