敗訴で100億円をどぶに?京都地裁が市の訴えを棄却した。
京都市のごみ焼却灰溶融施設(伏見区)で建設中に不具合が相次いだとして、市が発注先の住友重機械工業(東京)に損害賠償や工事代金の返還など167億円の支払いを求めた訴訟は27日、京都地裁が市の訴えを棄却した。裁判長は完成に向けて和解協議も促したが、市は控訴して争う方針だ。ただ今後、訴訟で勝てなければ、国補助金の返還や解体など最大65億円もの市負担が生じる。建設に約100億円の税金を投じたのに一度も使われることなく「廃虚」となる可能性が出てきた。
「まさか。完敗は想定外だ」。訴えが全面的に棄却されたとの知らせを受けた市幹部は、驚きを隠せない。担当の環境政策局職員は分厚い資料を手に庁内の連絡や市議会への説明にも追われ、敗訴のショックが市役所を駆け巡った。
溶融施設は高温のガスでごみ焼却灰を溶かし、容積を半分に圧縮する施設で、完成すれば、市内唯一の最終処分場である東部山間埋立処分地(伏見区、山科区)の延長利用につなげられるはずだった。
市は2005年、住重と同施設の工事請負契約を交わした。だが、試運転で基準値を超えるダイオキシンが検出され、溶融炉内でダストが堆積するトラブルも起きた。市は引き渡し期限内の完成は不可能とみて契約を解除し、14年3月に提訴した。
市は裁判で、契約解除に伴う経費や解体撤去費を住重が負担するという合意があると主張したが、判決は合意成立を否定。契約解除も認められなかった上、「完成始動しなければ、社会経済上の損失が大きい」と溶融施設を完成させるよう求められた。
市担当者によると、この溶融施設は住重の特許技術が用いられており、「他社が代行しても完成させられない」とする。だが、「相次いだトラブルと対応から、住重への信頼感はまったくない」として、市は控訴して争う構えだ。
ただ、控訴審に向け、市の主張を補強するような新たな物証は乏しい。判決を覆せなければ、溶融施設の解体費18億円は市の負担。市は「ほかの用途に転用できない無価値の建物の解体には、税金をかけられない。敗訴が確定した場合は放置するしかない」と、廃虚化の可能性に頭を抱える。
事業が完結しない場合、環境省からの補助金47億円も返還しなければならず、住重から損害賠償金などを得られなければ市の負担はさらに膨らむ。与党の自民党市議からは「なぜこんなとんでもない大負けをしたのか。厳しく説明を求め、責任を問う」という声も出始めている。