乳がん 20代、30代でも早期発見のため、必ず検診ことは必要!
歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(38)の妻で、フリーアナウンサーの小林麻央さん(33)が乳がんを患っている、との発表は社会に大きな衝撃を与えた。一般に乳がんの罹患(りかん)のピークは40代後半から50代。しかし小林さんは30歳になってまもない時に人間ドックでがんが見つかったという。20~30代の若い世代でも乳がん検診は必要なのだろうか?
同じような議論は昨年、タレントの北斗晶さん(48)が乳がんであることを公表した時にも起きた。北斗さんは「若かろうが年を取っていようが乳がん検診に行ってください」と呼びかけ、乳がん検診を実施している病院への問い合わせが急増した。しかし自治体などの乳がん検診は40代以上が対象だ。
実はがんには、がん検診が有効ながんと有効でないがんがある。有効性がある程度科学的に示されているのは大腸がん▽子宮がん▽乳がん▽肺がん▽胃がん--の五つだ。しかしこれら五つのがんでも、検診で100%がんを見つけられるわけではない。毎年検診を受けていても、数カ月でがんが一気に大きくなるケースもある。「検診さえしておけば、がんは早期発見、早期治療できる」という発想自体が誤っていると考えるべきだ。
◇20~30代の検診の有効性は示されず
そして検診の有効性は、年齢によっても差がある。日本の乳がん検診は40代以上が対象だが、米国予防医療作業部会は2009年、40代のマンモグラフィー(乳房X線撮影)はほとんど効果がないので推奨しないという勧告を出した。40代の女性の乳房は、乳腺密度が高くマンモグラフィーの精度が下がる。一方で、検診の結果、病気ではないのに「がん」「がんの疑い」とされ、不安になったり不必要な検査、治療をされる可能性が生じる。頻度は低いがマンモグラフィーによる放射線被ばくによる発がんリスクも考慮しなければならない。米国での勧告は検診で得られる効果に比較して、このようなデメリットの方が大きいと判断した結果だ。韓国は日本と同じく40代から、カナダや英国では50代からと、国によっても対応は違う。
そして20~30代となると、マンモグラフィーを受けても死亡率を減らす効果は認められず、デメリットしか生じないと考えられている。がん検診は、死亡率を下げることが科学的に証明されていて、メリットがデメリットを上回った場合にのみ実施する、という原則に立てば、この年代での検診は推奨されない、という結論になる。
ただし母親や姉妹など家族に乳がんになった人がいる場合や、乳房のしこりなど気になる症状がある場合はまったく事情が異なる。乳腺専門医に相談し、検査を受けるべきか検討した方がいいだろう。
乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍
乳がんは、乳房の中にある「乳腺」(母乳をつくるところ)にできる悪性腫瘍です。
乳腺は、母乳を産生する「小葉」と、母乳を乳頭まで運ぶ「乳管」に分けられます。
乳がんの多くは、乳腺の中の乳管の細胞ががん化して発生します。
乳腺の外へも広がる乳がん
乳がんを放置すると、がん細胞は乳腺だけにとどまらず、血管やリンパ管に入って全身をめぐり、リンパ節や骨、肺、肝臓などのさまざまな組織や臓器への転移をひきおこします。
20~30歳代半ばで子宮頸がんを発症する女性が増加中
子宮がんは、袋状の臓器である子宮の内側を覆う上皮細胞から発生するがんで、女性性器がんのなかで最も多いものです。子宮がんは、子宮の入り口付近の子宮頚部にできる「子宮頚がん」と、子宮の奥の体部粘膜にできる「子宮体がん」の2種類に分類されます。
◆ 子宮がんの原因 ◆
近年の研究により、子宮頸がんの発症にはヒトパピローマウイルス(写真参照)が関与していることが明らかになりました。このウイルスには100以上の型があり、そのなかでも16型と18型が特に発がんリスクが高くなっています。これらのウイルスは男性の性器に潜んでいて、性交時に子宮の入り口付近の細胞に感染します。
ただ、ヒトパピローマウイルス自体は特別珍しいウイルスではなく、セックスの経験がある女性の約50%は感染した経験があるとされています。通常は体に備わっている免疫力でウイルスは排除されるため、がんを発症することはありません。
しかし、ごく一部の女性はヒトパピローマウイルスが排除されないまま、前がん病変(正常な組織に比べてがんの発症リスクが高い形態に変化した組織)を形成し、さらにその一部の人が子宮頸がんを発症します。ヒトパピローマウイルスに感染して、子宮頸がんを発症する率は0.15%となっています。
子宮体がんは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の持続分泌が、引き金になるといわれています。卵巣から分泌されるエストロゲンは、月経血とともに剥離する、子宮内膜の再生と増殖を促進する働きがあります。
しかし、排卵障害があると、エストロゲンのみが長期間分泌され続けることになります。この持続分泌が、がんの原因になるのです。
◆ 子宮がんの症状 ◆
子宮頸がんの特徴的な症状に、性交時の子宮頚部への刺激による出血がありますが、初期には自覚症状はほとんどありません。自覚症状が少ない(=がんの早期)段階で子宮頸がんが発見された人の多くは、定期的に子宮頸がん検診を受けている人です。
子宮体がんの場合には、月経以外に出血(不正出血)がみられます。閉経後の不正出血がみられた場合は、すぐに婦人科で検査を受けたほうがよいでしょう。また、子宮や膣粘膜などからの分泌物の増加などによるおりものがみられます。
がんが進行すると、不正出血やおりものの増加が顕著になります。また、がん組織の壊死と腐敗菌の感染のため水溶性・血性・膿性のおりものが増え、悪臭を発するようになります。
がんが子宮口をふさぐようになると、子宮の中に感染などによって生じた膿がたまった状態(子宮溜膿腫)になり、下腹部痛や発熱を起こします。
がんが膀胱粘膜に浸潤すると頻尿、血尿や下腹部痛がみられ、尿管が腫瘍で圧迫されると、腎臓からの尿の流出が困難になり(水腎症)、末期には尿毒症を併発します。また、直腸粘膜に浸潤すると便に血が混じるようになります。
◆ 子宮がんの治療法 ◆
早期の子宮がんは手術療法や放射線療法によってほとんど100%治すことができます。子宮頸がんの治療は子宮を摘出する手術が基本です。ごく早期のがんで妊娠・出産の希望がある場合などは、患部のみを切除し、子宮を残す手術を行います。
進行している場合は、子宮摘出の手術を行いますが、切除する範囲や卵巣も同時に摘出するかなどは、進行の状況、がんの種類や患者の年齢によって判断されます。
子宮体がんの治療も子宮摘出が基本ですが、ごく早期ではホルモン療法だけの治療も可能です。手術の場合、子宮体がんは卵巣などへ転移しているケースが多いため、卵巣や周りの組織も広い範囲で摘出するのが一般的です。